国際図書館連盟(IFLA)2012-プレコンフェレンス in タンペレ

  
 フィンランドで開催されているIFLAの年次大会に来ています。私は、昨年、3.11と転職直後の混乱から、プエルトリコでの大会を欠席しました。一昨年はヨーテボリでの開催でしたので、今年は、"また"北欧です。
 今回、私はまず、タンペレ大学で、プレ・コンフェレンスに参加しました。ヘルシンキから移動した8日はタンペレ大学の図書館を見学して,継続的な専門職の発展と職場学習分科会およびインフォメーション分科会(IFLA Contnuing Professional Development & Workplace Learning and Information Literacy の合同のセッションの初日の参加者顔合わせの会に参加、翌日は一日、朝から夕方まで、女性、情報、図書館に特別な関心をもつ人たちのグループ(IFLA Women, Information and LIbraries Special Interest Group)のセッションに参加して、継続的…のセッションも少しだけを覗き、夕方にはタンペレ市立図書館(英語のHP)の見学に、そして3日目は朝から継続的…のセッションに参加して、ヘルシンキに戻りました。
 特に女性…のセッションは、これまで参加したことの無かったグループのものなので、刺激的でした。今回のテーマは、「図書館と情報センターはいかに、女性の情報へのアクセスを発展させ、女性の文化遺産を保存することができるか」というものでした。参加者は20名強というところ、出身地域は、存在感の大きかった順に(当然、主観的に)、米国、西欧各国(オランダ、ドイツ、キプロス、スペイン、、)、北欧各国+リトアニア、そしてアフリカ(ナイジェリア、、)、アジア(インドと日本)というようなメンバーだったと思います。このセッションは、WINE(Women Information Network Europe)と合同で開催しており、このWINEの役員であるブリエンド?(Tilly Vriend)さんが冒頭になさったお話から、今、女性と図書館に関わっては、人びとの複数のアイデンティティ(multiple identities)を認める社会の実現、女性/ジェンダーに関わる文化遺産の次世代への継承、情報への平等なアクセスを実現するための図書館サービスがホットなトピックであると理解しました。
 この日、印象的だった話題は、、
 ・テキサス女子大(Texas Women's College)で、女性に関するコレクションの再編が行われているという報告。同大は、米国では最も大きな公立女子大のひとつだそうで、1930年代から女性に関する資料を収集してきたけれど、たとえば、お裁縫、お料理、エチケットという女性の日常生活に関わる古い資料の一部を、(女性に関するコレクションをジェンダーや女性に関する研究、学習に沿ったものとするため)一般書架に送ったり、貴重書として特別な保存に回したりという作業をしているとのこと。これについては、他国から、その判断基準は、というような質問が(そうした作業には慎重であるべき、というような態度で)出されました。課長(director)が作業をしていると言っていたけれど、、私も、反対、かな〜。やっぱり、女性のためのコレクションとして(または、伝統的な女子大において)、どのような資料が受け入れられてきたか、そのことそのものが、すごく興味深いと思うのです。それをバラバラにしてしまうのは、私には、望ましいこととは思えませんでした。
 ・インドからの報告で、難民の女性の話を聞き、記録し保存するというプロジェクト。1947年以降の、パキスタンバングラディッシュの分離・独立の動きの中で難民が多数発生、その中でも女性が大変な困難を経験してきたとのこと。その経験を話したい、聞いてほしい、記録してほしい、というニーズがあることを、その経験者の女性たちへの調査から明らかにしたという発表でした。発表者から、「何が記録され、何が残されるべきか?国の歴史のみなのか?」という問いかけがありました。特に、女性の暴力や抑圧の経験が記録されないこと、また女性の文化が破壊されていることなどが問題として指摘されました。この発表は聴衆の多くの人たちを刺激したようで、スペインからは、1930年代のスペイン内乱の難民、フランコ独裁時代(-1975)の抑圧についての発言があり、ドイツからは、旧東ドイツの女性の生活と抑圧の問題について、もっと記録されてよいのかもしれないといった発言がありました。女性へのインタビューと記録作成がもっと行われるべきでは、女性の声が見過ごされているのでは、といった意見がほかにも、アフリカからの参加者等から出ました。以前も書いたことがあったかもしれませんが、『インドネシア九・三〇事件と民衆の記憶』という本を読んだときには、かなりつらく、インパクトがあり、聞き取りと記録作成の難しさや重みを考えさせられたのですが、記憶違いとかねつ造の可能性とか主観的に過ぎるとか、、経験の記憶の聞き取りとその記録には難しさはあるけれど、「覚えていて!」「わたしを忘れないで!」という叫びに応えないということはできない、そんな選択肢ってない、というように思いました。
 さて、継続的…の方の今回のプレコンフェレンスのテーマは、「インフォメーション・リテラシーへの道:学習を促す者としてのライブラリアン」でした。こちらは、、どうかな〜。いくつかの発表を聞いたけれど、、。なんか、規模はものすごく大きかったし(いくつもの部屋に分かれて実施)、参加者も定員いっぱいだったようだけれど(定員って100名弱とかかなあ、そんなにいなかったかなあ)、発表の質というか、は、全体としては、低調だったような。あまり刺激的な発表はありませんでした。最終日の朝、かの有名な、クルトー(Carol Kuhlthau)先生のご講演があり、たくさんの参加者が集まりました。6月にまたご本(Guided Inquiry Design)を出されたそうです(コレです)。とっても、アメリカ的な定式化だなあと感じるお話でした。
 タンペレ大学の図書館は、1階の教科書コレクションが印象的でした。10冊前後の複本を用意して、一夜貸しもしている。英語の本(英国、米国、香港で出版されたもの)が一番多かったと思います。あと、フィンランド語(たぶんスウェーデン語も)、ロシア語のものも見えました。この図書館は、蔵書数は49万強、e-bookが40万弱ですよ!だから、図書館って、書架が少なくて、、あと、この大学図書館は、サービスにお金を取ります(値段はこちら)。延滞の罰金とか、データベース検索(代行検索???)とか。
 タンペレ市立図書館では、館長さんが、今後、書架は減っていき、ソファが増えていき、図書館は人が人に会いに来る場所になる、と力強くおっしゃっていたのが印象的でした。今日の写真は、この図書館の音楽室というのかな、演奏のできるお部屋です。音楽コレクション(CDやDVD、楽譜等々のコレクション)のある部屋の中に、演奏のできる小部屋が複数ありました。この写真の右側の奥は白いピアノです。左側は、CDコレクションだったと思います。
 フィンランドの図書館では、e-booksへの抵抗はほとんどしていない印象です。それから、どの図書館でもこちらでは、カウンターで相談をするのには、日本の銀行のように、番号札を持って待ちます。