学校図書館専門職その2

 改めて、議論は、学校図書館に「人」を、か、学校図書館学校図書館専門職を、なのか、ということなのだ、ということだとわかった気がしています。ただ(いっぱい)人がいりゃいいというのじゃないですよ、職場/仕事は。
 世界的にみて、学校図書館専門職の職務の総体がひとつであるのに、これを分割しようという動きであるとしか、私には、二職種制確立の主張は、見えません。たとえば、子どもの読書サポーターズ会議の最終報告書の参考資料にいろいろな学校図書館関係教職員の責任や役割分担を示した図表はあります。「学校図書館の専門スタッフとボランティアの役割分担例」なんて見ると、こんなオリジナリティのあるもの(世界でただひとつの存在でしょう:笑)よく作ったなあと頭が下がります。が、よく見てみましょう。実は、ぜんぜん、職務の切り分けはできていない。とくに、教育活動に関わる部分は、ほとんどが、司書教諭と学校司書の両方が行うことになっています。だけど、学校司書は、「専門的な知識・経験を有する学校図書館担当事務職員」あくまでも事務職員とされています。
 法制化に向けて、このように、ある種、着々と(遅々とではあっても)歩みが進められてきていたことは、この報告書などを見ても、実感するわけですが、しかし、やはり、過去と現状にとらわれすぎずに、未来志向で、改めて、学校図書館に専門職がいて機能するということについて想像してみていただきたいと思います。法制化に関わって私にご連絡をくださっている方のうちいわゆる学校司書の方に、私が法制化には反対であると言うと、そのまま話が終わってしまうわけですが、私はいわゆる学校司書の方たちの過去のお仕事を認めていないから、反対しているのではありません。学校司書の方たちの過去のご活動には、心からの畏敬の念をいだいております。ただ、法制化は学校司書の方たちにもいいことはない、と私はやはり思います。法規定ができて、今は曖昧な状況だからこそできていることが、しづらくなる恐れだってあると思います(特に教育的な職務の部分について)。学校図書館専門職の職務の総体は、ひとつにしておくのがよい、と私はほんとうに思っています。ちなみに、世界的に見て、二人以上の職員が学校図書館に配置されているときには、その二人の関係は専門職(professiona;責任者=専門職として自律)と準専門職(paraprofessional;専門職の指示のもとで作業に従事)等になっているというのが私の理解です。
 もう10年以上、私は、学校図書館関係の各種団体とは、お互いに距離を置いてきました。そのうちのひとつ、学校図書館問題研究会が、この夏の福島大会で、法制化の動きに対してアピールを採択しています。この文言、一語一句、私が書けば同じものにはなりませんが(笑)、学校司書について、ただ学校図書館に「人を」というような考えで、法制化が行われることを、私も恐れています。
 ……それから、図書館専門職の養成を議論するとき、「今、働いている人が(そのまま新しくできる専門職に)なれないと困るから、あまり高度な資格の基準を設定するのはだめで」ということをおっしゃる方がおられますが、専門職は、誰もができるわけではない仕事をするから(誰もが通過できるわけではない養成の過程を経ているから)専門職なのでありまして、本質的に(残念ながら)排他的です。まあ、これが日本社会の文化といまいち親和性がないということが、つらいところなわけですが、、。やっぱり「人」か「専門職」か、の議論なわけですね。

(2012.8.25追記)最後のパラグラフが、このページだけ読んだ方に、専門職を誤解されてしまうかもしれないと思い、ことばを足します。排他的というような不寛容が専門職に許されるのは、その専門職が利他的目的のために行動する原則(倫理)をもっていて、また実際に社会的にそのような行動の価値が認められるときだと思われます。そのような図書館専門職のあり方がどのように日常的な彼らのふるまいとしてあらわれるかについては、たとえば過去のこちらの記事をお読みくださいますなら幸いです。