「多文化」と図書館

 ちょっと、思索不十分な話題で、断片的な書き方になりますが。
 図書館の多文化サービス(multicultural library services)は、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアの図書館の実践なんかが基本的には好意的に紹介されてきて、日本でも当たり前のように行われるようになっていると思う。2008年には、「IFLA/UNESCO Multicultural Library Manifesto」が採択されてもいる。が、その理論的、政策的な背景にあったと考えられる「多文化主義(multiculturalism)」は、1990年代後半から、批判にさらされてきた。にも関らず、多文化主義と図書館の多文化サービスに関る問題はあまりちゃんと研究されてきていなくて、現在、書いている論文の中で触れようとして、筆が進まず苦悩していた。そこに、ブタペストに、ドイツに、押し寄せている難民のニュースを見て、あまりのタイミングの一致に驚いた。いや、この問題は、もうだいぶ前からあったわけで、ここで決壊したということですね。多文化主義のはらむ問題については、この春に書かれた、Foreign Affairsのこの記事がよくまとまっていると思う。ちなみに、この記事の中でも出てくる、ドイツのトルコ人guest workersについては、「おじいちゃんの里帰り」という映画(ドイツ語の公式HP)がある。この映画も、今のニュースの理解を助けてくれる、かもしれない。
 映画つながりで、先日観た、「ミニオンズ」という映画のことを。この映画を観ていたら、「おしり」という音が2度聞こえたような気がした(笑)。同行者は「やきとり」と聞こえたと言う。それで、ミニオンズが話している言語はなんなのだろう、と思って、ネットで検索してみると、映画の作者たちはMinioneseと呼んでいる、いろいろな言語の単語を音のおもしろさなんかで選んで作ったものらしい。Minioneseと入れると、dictionaryやらgameやらけっこう出てくる。ま、こういう発想も、多文化と申しましょうか。

(2015.9.10追記)2月に書いたものの中で、「多文化共生社会」という言葉を使っていた。この言葉の問題について、最近、「多文化主義」について勉強している中で、塩原良和さんの著作で学んだ(『変革する多文化主義:オーストラリアからの展望』法政大学出版局、2010. この第5章は力作かと)。7月に内藤和美さんのご講演「あらためて『男女共同参画社会形成』、『女性の活躍促進』を問う」で、「男女共同参画」という言葉の問題をうかがったときと同じ感覚に。一所懸命、こうした言葉のもとでの施策のために働いている方たちの存在はわかっているのだが。内藤先生のご講演については、そのうち記録が公開されるので、そのときにはリンクを貼りたいと思う。