OHIO!

 シラキュースで4泊ののち、オハイオ州の州都コロンバスに、2016年のIFLAの年次大会に参加するために移動して、あっという間にまた4日が過ぎました。
 さて、今年のIFLAですが、アメリカの図書館およびアメリカのライブラリアンシップをモデルとしているようなところのある私にとっては、非常にproductiveな会合でした。参加したセッションで議論のあったことについてはこの後書きますが、まず、昨晩出た、Cultural Eveningのイベントが私には大変に興味深かったです。Cultural Eveningは、以前にも紹介したことがあったかもしれませんが、IFLAの年次大会中に1度あるイベントで、夜に、その開催地の文化について紹介する、たいていはちょっとした食事も提供されるというようなイベントです。
 今年のCultural Eveningの会場は、COSIというところを会場として開催されました。COSIは、Center of Science and Industryの略で、ここに歴史が書かれていて、そうは書いていないのですが、私の見たところでは基本的には子ども向けなのではないかと思いました。この歴史の説明の最後に、今の建物は35年前の磯崎新さんの建築とありますね。ちなみに、公立ではなくて、NPOによる経営ですね(こちらに予算のことが書いてあります)。Parentsなる雑誌に、全米でもっともよい科学館と認定されたこともあるようです。
 この科学館での開催というのが、次の2つの点から私にはとてもアメリカ文化の紹介として適切だったなと思いました。
 1.過去に私が出たIFLAのCultural Eveningは、たいてい一つの大きな会場(部屋)で行われ、全参加者が一つのところに集まる形でした。今回は、そういう一体感の演出は無し。科学館を貸し切って、参加者は自由に施設内を回りました。誤解を恐れずに端的に言えば、アメリカの個人主義が表れていたかと思います。自分の国のすごさを全員に一斉に見せつける、みたいな発想じゃないのですね。かつ、会場が「Science(科学)」と「Industry(産業)」のショーケースのようなところ、というところ。これが極めつけ?!ですね。自分たちの文化は=近代科学と工業化社会、と言っているようなものじゃないですか。いっぱんに、その国の文化を示す、というと、多くの国は、伝統文化を出してくると思います。まあ、スウェーデンABBAっていうのがありましたけど(笑)。すでにほとんど見かけなくなった、過去の遺産にフォーカスをあてる。嫌みなほどに、古いものを出してくる気がするのですが、アメリカはもうそこは諦めているのでしょうねえ?彼らがそこにフォーカスを当てようとすると、ネイティブ・アメリカンになってきますね。(カナダは、最近は、そこに光を当てまくって、アイデンティティの再構成をしようとしていると感じます。)
 2.科学館の各所でいろいろなエンターテイメントが提供されてきました。例えば、Two Left Feet Line Dance Instruction(ダンスが下手な人向けのラインダンス指導という意味のようですが、カントリミュージックを流して列に並んで簡単な踊りをみなで揃えてしていました。もちろん誰でも入って踊れますよ!)、Columbus Gay Men's Chorus(きれいなおねえさまがバンドを背に歌って、みなが自由に踊るという。と言うか、ゲイってアメリカ文化という自己認識なのね、と)etc.。同時に、各階に設けられた会場がEast Coast;Midwest;South;Mountain West;West Coastの地理区分それぞれにあてられて、それぞれのお料理をバッフェ形式で提供していました。私は、East Coast(東海岸)、Mountain West(ロッキー山脈周辺部)、West Coast(西海岸)に行って食べましたが、それぞれ、ニューヨークスタイルのピザとシーザーサラダとニューヨーク・チーズケーキ;ナチョスビーフ・ブリスケット、コールスロー、チョロス;お寿司、冷たい緑茶といったものが人気でした。特にお寿司はすごい人気ですねえ、驚きます。この形式のお料理の提供は、アメリカは地域(州)毎に違うのよ、っていうことを食事を通して示していたように感じました。つまり、多様性(世界中から人の集まる移民の国)ということが、アメリカ文化なのだというメッセージを、このお料理の提供方法に私は見ました。いいですねえ。
 といったことで、Cultural Eveningがほんとうによくできていたなあ、というのが私の今年のIFLA体験一番の感想でした。
 ところで、写真はColumbus Metropolitan Library本館(Main Library)の児童室です。現在、州立図書館群(うち10館)は、なんと約135億円をかけて新館建築、リノベーションを行っている最終段階だそうです。入口に寄付を出した人のリストがありました(3つの団体が1億円を寄付)。この中央館は、かなりの広さ(3階建)で、新館建築とリノベが終わっていました。人が写っていませんが、左奥も右奥も、棚の向こう側の快適そうな空間に子どもがいました。とっても快適そうな床、椅子が向こう側にあるのです。特に椅子は、個人で軽く横になりながら本を読むことができるようなものだったりして、とっても快適そうで、どれも子どもたちで埋まっていたので、写真が撮れず、お見せできないのが残念です!この本館近くはダウンタウンで、黒人も多く住んでいるようで、利用者もそうでした。特に児童室は黒人の子どもばかり。パソコンのゲームをしている子もいましたが、多くの子どもが快適そうな椅子に座って、集中して本を読んでいました。大人のフロアで勉強している黒人の高校生も複数、見かけました。もちろん、白人などの利用者も、半数以下だったと見えましたが、いました。見た感じでは多様性のある利用者層だったと思います。しかも、私が過去にアメリカで見た公共図書館の中でも、もっとも雰囲気がよかったと思います。図書館の設計案としても、サービスのあり方の参考例としても、訪問の価値があると思います。
 さて、これから飛行機の中で、IFLA2016で参加したセッションで考えたことについて書いて、明日、アップしたいと思います。今日はこのくらいで。
 あ、話が思いっきり変わりますけど、デンマークからの参加者が集団で、男女ともに、Cultural Eveningの会場(屋外のエリアですけれど)の食事の列に並びながら、私のすぐ前で、タバコをもうものすごい勢いで吸っていまして。ほんと北欧の人たちって思いのほか吸うなと改めて。大嫌煙家の私はよっぽど、こっちに煙がかかってんだよ!!!I am forced to smoke with you!!!とでも、喧嘩をふっかけそうでしたけれど、さすがに同じライブラリアンの仲間が集まる場で喧嘩はないかと諦めました。北欧の社会(空気)があまりに正しい(いい)から、あえて害(煙)にでも触れたくなるのでしょうか。誰か、彼らがなぜあんなに吸うのかを教えてください。って、この部分、炎上しそうだな(笑)。とにもかくにも、私は、小池百合子センセーが、選挙期間中に言っていたとおり、東京都のタバコの規制を進めてくれることを信じています。一刻も早く!受動喫煙のない社会の実現を望みます。