ヴァーチャル・リアリティと図書館

 今朝,通勤時に,スマホを見ていたら,フェイスブックCEOのザッカーバーグがプエルトリコの件で謝ったという記事が流れてきていた。フェイスブックは,ヴァーチャル・リアリティ(VR)にずいぶん投資しているそうなんですよね。でも,こういう記事に出ているように,現時点ではVRの装置の売れ行きはよろしくない。まあ,それでかね,ザッカーバーグは必死なのかなって思います。もちろん,フェイスブックがすべてVR化されたら,おもしろいだろうけれど,そこにいきなり行くって状況じゃないのかね。で,フェイスブックはデモでプエルトリコのハリケーン・マリアの被害を体験できるものを作って公開し,VRは「共感」を広めるとザッカーバーグが言った。だけど,そのデモの最後にザッカーバーグと同社のレイチェルっていう役員のアバターが交わす会話が以下。

“Do you want to teleport somewhere else?” Zuckerberg’s VR avatar asked as he wrapped up his conversation about Puerto Rico. “Yeah maybe back to California?” another executive answered.

つまり…プエルトリコについての会話をまとめるにあたって,ザッカーバーグアバターが「どこか他のところにテレポートする?」と聞く。「そうね。カリフォルニアに戻りましょうか?」と役員が応える,と。ずいぶん気楽にプエルトリコの大変なところに行ってたもんですね,と誰でも感じるのでは?
 「これどうよ。倫理観ゼロ」とある人にこの記事のリンクを送って意見交換していたら,相手方から,「<カタルーニャ>独立宣言は保留 中央政府との対話を模索へ」という新聞記事へのリンクが送られてきた。で,私が言ったのが,「バルセロナ独立運動ににぎやかしでVRで参加したらおもしろいかもね」(注:ジョアンとは昨年,バルセロナから本学に来ていた彼であります。彼から,先月末に,300年のスペインによる支配を終わらせる云々というメールが来ていた)って,これぞまさに倫理観ゼロ発言。要するに,VRみたいな新しいコミュニケーション・テクノロジーが私たちに要求しているのは,ほんとうに倫理観であり,倫理教育なんだと思ったわけです。共感をVRが育てるか,よく研究したり,議論したりする必要がありそうです。

 先週の木曜日にハーッシュ先生が来日され,翌日には学内で講演会を開催,おとといの月曜日には学生たちと"Conversation with Dr. Hirsh"という自由な会話の場をもちました。来週の19日には,学内講演会とほぼ同内容を予定している公開講演会を開催(詳しくはこちら),20日には学内で学生たちと"Conversation with Dr. Hirsh"その2をいたします。で,先日の講演会の中で,VRの話も出てきたのですね。軍の訓練では導入されて久しい,とかね。これも倫理観に関わってきますよね。軍の訓練で,実際に戦場にいるかのような臨場感をもって,銃を撃つ練習をしているとかっていうことですので。でも,VRは,私は,避けられない,テクノロジー発展の方向かなと思ってます。この夏,IFLAの会議でも,VRと図書館の関係についての発表を聞きました。その内容については,11月24(金)夕刻に本学で公開でまたイベントをする際,少し私から報告しようと思っています。