成田喜一郎先生とともに

 おととい、NDL国際子ども図書館で、講演会「子どもの探究活動と図書館の可能性」と題する講演会に登壇しました。尊敬する、成田喜一郎先生の、聞き手としてです。まことに、まことに、光栄なことでした。成田先生が当日のお話しの内容を、ここで公表してくださっています。このほかに、後日、NDLからも記録が公開されるものと思います。
 以前の勤務校では、社会学部教育文化学科というところにいましたが、2011年の春に東京の大学に移って、学校・社会教育講座という、教員免許状、学芸員社会教育主事、司書の資格付与のための全学に開放された教育課程に勤務することになり、司書および司書教諭の資格付与の関連業務に忙殺されて、教育学の勉強が疎かになっていました。そんなところでこの講演会だったので、学校図書館研究者でありながら、教育学の最新動向をよく把握できていない自分を徹底的に人様の前でさらけださねばならないのかと、どうしようかと思っていましたが、成田先生の寛容さに甘えてしまって、結局のところ、学生気分でいろいろうかがって、それで終わってしまいました。聞き手だから、これでよかったのだろうか。。
 この講演会は、私にとっては、同図書館で2012年度と2013年度取り組んだ、中高生向け調べものの部屋の準備調査プロジェクトの成果報告会であり、また同プロジェクトに続く、調べものの部屋で実施する体験プログラムの作成作業を成田先生に監修していただく、今年度からの一歩進んだ、具体的な取り組みへの、引継ぎのような意味をもっていました。無事に終わってほっとしています。「調べものの部屋」が、実質「探究の部屋」となってくれるようにという願いを、自由に述べさせてくださった、NDLの方たちには心から感謝しています。このような願いを、NDLの中で、NDL独自の形で、育んでいただけるよう、心から祈ります。

 蛇足ですが、講演会では、最後に職員問題に関わるご質問も出ました。ある程度は私の考えを述べました。
 最近、複数の方から、6月20日学校図書館法改正についてどう評価するかについて、この後の課題について、聞かせてほしいというような執筆等の依頼をいただきました。しかし、お断りしています。私は、何年も、「学校司書」の法制化という形での学校図書館法改正に、反対してきました。なぜなら、私は、学校図書館だけでなく、図書館の、単一の専門職の日本での成立が、日本社会に必要だと信じ、それを望み、そしてそのためには、「学校司書」が法律に刻まれることは望ましくないとはっきりそう考えるに至っていたからです。この考えは、何年も熟考の末、確信のようになっていましたし、私は本気で訴えていたのです。ですから、今、法改正となり、「学校司書」が法律に刻まれたとして、すぐに、その対応について書くことは、甘いと言われましょうが、私の今の心理状態ではできません。このあとの対応は、「学校司書」の法制化を望んできた人たち、また肯定してきた人たちが、責任をもって、していただくということでよいと思っています。私は、国際的に見て、今回のできごとがどのようなことなのか、どのような意味をもつのか、何年かかけて、日本語だけでなく英語でもいろいろな人に読んでもらえて、考えてもらえる論文を書こうと思っています。
 なお、私の「学校司書」法制化への懸念は、2013年の3月15日に東大で実施したシンポジウム「LIPER3 シンポジウム記録 : 日本の学校図書館専門職員はどうあるべきか : 論点整理と展望」で明確にしていますし、また、1960年時点で室伏武先生がお考えを表明されたもの(室伏武「学校図書館事務職員論」『学校図書館』No.211, 1960.10, p.45-48.)に、的確に問題提起されていると思います。すでに済んでしまったことではありましょうが、ご参考まで、示しておきます。