学校司書の資格・養成等に関する作業部会(第1回)配付資料を見て

こちらに上がっており、見ました。資料8、9に脱力。
 特に、資料9の表5にあがっているようなことを、現在の司書資格付与プログラムと司書教諭資格付与プログラム、そして教員免許状付与プログラムの中で、私が勤務校でやるとなった場合、授業が大混乱すること間違いなし、というのが私の見方です。既存の課程はそれぞれに、目的があって置かれており、つまり、(図書館法に定められる、つまり公共図書館の)司書の資格付与、(学校図書館法に定められる)司書教諭の資格付与、そして教員免許状の付与を目指して置かれているわけですね。「学校司書はもちろん,授業を行うことはできないが,支援をすることはできる。」(資料4)のような理解(正しいと私は思う、そしてここが学校司書の問題なのだと私は思っている)をふまえたとき、つまみぐいされる3プログラムの授業は、どうすればいいのだろうか?教諭になるのじゃない人に、司書教諭養成なり教員養成なりの授業を受講されるとなるなら、それらの授業の目的設定は、司書教諭なり教員なりの高度専門職の養成からずらさないといけないということになるのかな。そして、受講生は総合的にどのように自らの知を認識するのだろうか。
 専門職の養成というのが、他の専門職の養成プログラムをつまみぐいするようなことによって可能であると主張することは、その専門職の真の成立を遠ざけると私は思う。また、元あるプログラムの授業はきっと混乱する、と私は思う(こういうなぞの施策は戦後の、実際に教員になる人ではなくて、教員免許状を取りたい人のために授業をしてきたような教職課程ならいざ知らず、これからの高度専門職としての教員養成プログラムには嫌われるに違いない。だいたい、教員養成が大学院に移行することが議論されているじゃないの)。
 司書教諭の資格は、図書館専門職の資格なり養成のコア教科ではなく、教員免許状を先修(ベース)としているところに問題があると言われればそうかもしれないが、その先に「司書教諭」として修めるべきカリキュラムは独自にあり、構造としては、専門職を成立させるための基本的な形にはなっていると私は思う。司書資格からもちょっと、司書教諭資格からもちょっと、教員免許状科目からもちょっと、ってなんじゃそりゃ。これはいかにも、資格制度は作れないけれど、こんなふうに現在あるものを有効活用すればなんとか形になりますよ、というご提案ですよね。私は反対です。
 なんでもちょっとずつ知っている人を専門職と認めるなんてありえる?そんな人は、集団で仕事をするときに、今の時代、この、知識が細分化してしまっている今の時代、尊重/重宝されないと私は思う。専門職としてある特定分野に長けた人が、その長けたことを証明できるだけのカリキュラムを学んだあかし(証)であるところの学位を持っていて、そのうえで、他の分野の専門性をもった人たちと協働する、これが高度知識基盤社会じゃないのか。

(2016.6.30)昨日アップしたときの、最後の3つのパラグラフ、誤解があり、削除しました。その上で、以下を加えたいと思います。

 資料9の表5のA案は、司書科目を基盤として、それに学校図書館についての学習を加えるという構造になっていることにやっと気がつきました。公開前にきちんと気づいてしかるべきでした、大変失礼いたしました。司書資格の最低単位は24単位であり、このA案は27単位で、そのうち10単位だけが司書資格外の科目ですね。これは、ありなのかなという気がしました。LIPERで提言されたような(最終報告書はこちら)、図書館専門職を館種を問わずに養成し、その先に各館種の専門知を学ばせるということは、欧米の基本の方向だと思う。
 ただし、過去のいわゆる学校司書の人たちが受けてきた教育が、公共図書館の司書を養成するための司書資格の付与のための教育であったことが、日本の戦後の学校図書館史にもたらした影響についてよく考えてみる必要があります。司書資格を、図書館専門職の基盤とするということなら、それをしっかり確認する必要がある。それをあいまいなままにすると、公共図書館のための教育を受けたメンタリティで学校図書館に入っていくことになるだろうというのを、私は懸念します。それに、司書教諭資格の定義も新たにしないといけないと思います。少なくとも私が教えている「学習指導と学校図書館」は、このように司書科目を履修しただけの学生は過去、想定していません。教職のために学んできた学生が想定されています。このA案のカリキュラムの学生には参加できない内容だと思う。司書教諭資格付与の課程もやっぱり混乱するな…既存の資格の科目は、その資格のための科目として現在までは置かれてきたことを、きちんと整理する必要がありますよ。
 また、日本では、司書資格が社会的には専門職の資格として十分に認められていないことにも留意すべきですよ。ここで議論されているような資格をとって出てくるキャリアの選択肢が、学校図書館の非正規職だけという状況を、どうしたら変えられるでしょうか。養成の高度化しかない、と私は改めて思うのです。