シラキュースから学校司書のモデルカリキュラムに一言

 調査をしようと、シラキュース大学に昨日から来ています。車を借りなかったら、思っていたよりも田舎というか、ド大学町のようで、キャンパスに止め置かれているかのようになっております(笑)。アメリカでLISの名門校とされるところって(一例としてUS Newsのランキングはこちら)、多くが、田舎というか、なんというか、アメリカの典型的な大学町の大学にあるような気がしますねー。このUS Newsのランキングで4位のSyracuseより上にある3校すべて行ったことありますが、シアトルのワシントン大学以外の2校とも、なかなかの田舎でございました。これをどう理解したらいいのかな。私はハワイ大でLISに行ったので、特殊な土地でLISに行ったと自覚していましたが、ハワイ大マノア校ってけっこうな街中にあるという意味でも、アメリカの典型的なLIS名門校とは違うなあと思ったり。ちなみに私は、2年目夏の1学期は、メリーランド大学で過ごして単位を取って、その単位をハワイ大に認めてもらったのですが、メリーランド大学も、DCが近くて都会的な雰囲気の大学でしたが、あれもまた特殊だったのね、と今になると思います。日本ももっと、地方都市で大学が一つの産業というか、町に活気をもたらす存在になれたらいいのにね。なんでそうならないのかなーー
 前置きなのかなんなのか、が長くなりましたが、文科省学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議に置かれた学校司書の資格・養成等に関する作業部会が第3回の会合をもって、学校司書のモデルカリキュラム案が出てきたんですね。やっぱり、司書資格、司書教諭資格、教員免許状のための科目をつまみ食いする構造を基本として、2科目だけ新設科目が提案されていますね。これらの2科目は、以下のように、司書課程の選択科目として開講することもできるとしています。

○ なお、「学校図書館サービス論」及び「学校図書館情報サービス論」は司書資格の科目の選択科目「図書館基礎特論」又は「図書館サービス特論」として、開講することも可能である。ただし、単位数はそれぞれ2単位であることに留意する必要がある。

 この新設2科目を設置する大学がどれだけあるか、がこれからの鍵ですね。これは、大学の余力の問題でもあるだろうと思います。科目新設のコストを学校司書に対して割く力のある大学がどれだけあるか。もしくは、司書課程の2つの選択科目で新設の代わりとするとして、これらの科目の方針を過去と大きく変えるのは科目新設のコストほどではないとはいえ、2012年度以降すでに一定の方針のもとで科目開設してきたものを変えることができるか。また、司書教諭資格の4科目(「学校図書館メディアの構成」以外。ちなみにこの科目は、司書資格の2科目で代替できることになっている)が学校司書のカリキュラムとされることで起きてくる混乱、つまり、教員免許状取得予定者ではない学生がこれらの4科目を受講することの混乱を引き受けられるかどうか。このあたりが検討の中心になりましょうかね。どういう大学がこれを引き受けられるか、注目ですね。本学も検討することになるのかな、さて如何に。

(2015.9.17追記)第3回の議事録を読み、そして、この親会議である「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」の第7回の配布資料を見ました。独自科目3科目は、司書教諭資格科目と司書資格科目と読み替え可能という結論になったらしいですね。私はこのオチ、気に入りました(笑)。第3回の議事録を見ると、だから言ったこっちゃない、学校司書の法制化は悪夢なんだよ、とは思いましたけれど、でも、全委員の発言はそれぞれに納得できました(各人の観点が違うのだけれど、言っていることはわかる)。ただ、とある方が、「議論をしているほとんどの方々は,細かいことに対処するのが精一杯で,たいした理念もないことにがっかりしました」って短い一言。
 この「学校司書のモデルカリキュラム」は、アメリカ、オーストラリアやフランスで起きている教員免許状+図書館情報学学校図書館専門職という養成モデルのいわゆる廉価版ですよねー。教員免許状を前提としないで、教員免許状科目を部分的に履修した人が想定されている。まあ、私は、教員免許状+図書館情報学学校図書館専門職という養成モデルでもともとは考えられた司書教諭にこだわっていますので、教員免許状をぜひ学生にはとってもらって、それを前提として、司書教諭科目を実施する本学のあり方は、私はやはり変えたくないと思います。でも、実際には、司書教諭資格科目を含んでこの学校司書のモデルカリキュラムはできあがっているから、もう司書教諭の独自性(学校図書館のマネージャーであるという)は消えたと思う人が世の中には出てくるね、きっと。司書教諭資格がレベルダウンさせられた一面がある。ひーー
 私は、教科教育法を前提としない「学習指導と学校図書館」って...と、本気で思うのですよ。それやっちゃったら、司書教諭資格の授業、理念が崩壊するよ。。。私は、司書教諭資格を取っていく中で、ほんとうに司書教諭になりたいと言い出した学生には、司書資格を取るように勧めてきたので、これからもそうするつもりです。あ〜あ、学校司書資格はいらなかった、司書教諭資格をレベルアップすればよかったんだ、とやっぱり思いますね。そうしたら、学校図書館専門職としてのレベルアップになったのに。司書教諭資格が法制化されているがために、それができなかった、ということなのかな〜
 そうそう、3科目の読み替えって、法的な根拠のないこの学校司書カリキュラムについて、文科省が管理できるのかしら。いったい何をもって、読み替えできるとするのか、実際のところは大学の課程の判断と責任になるっていうことだよね。いい加減なところが出てくるかもね...アクレディテーションの話は出ていたけれど、親会議の第7回の議事録がまだ出てないから、どうなったかまだわからん。
 とにもかくにも、これからは、私は、司書・司書教諭の資格付与の課程も差別化の時代だと思ってます。覚悟を決めて、質の高い課程の実現のために努力したいと本気で思っています。そして、本気で学びたい人に、選んでもらえる課程、大学になりたいと思いますね。