渋谷のSPBSに行ってきました。

 ここ8年くらいかな,私の髪の毛を切ってくれている美容師さんが,赤ちゃんが生まれたということで,お祝いに絵本を送ろうと決めて,思いついてSPBSに寄ってみました。銀座の教文館のナルニア国に,はじめての絵本のセットを見つけて,参考になるわと思ったのだけれど,やっぱり私の好きな絵本を送りたいなと思い直して,ちょっと違う,異色の(笑),アプローチで探すことに。
 京都時代は,ある意味でとってもメジャーな恵文社とか,ちょっと不思議な洋書の古本屋さんGreen e Booksとか,小さな個性的な本屋さんのことが,私の心の中でなんとなく動向が気になっていた。一方で自宅の近くの大垣書店の烏丸三条店は,日常的に出版の動向チェックに覗く本屋さんとしては絶妙の大きさで,使いやすい店内のレイアウトやディスプレイで,しょっちゅう行っていた。大型書店としては,丸善は数年前にカラオケ屋さんになってしまったけれど,ジュンク堂が自転車で10分かからないところに2店舗になって,いやはやとにかく,京都生活は本屋さんには恵まれているなあって思っていました。
 東京に戻ってきて,自宅近くで,わ〜い見〜つけたって先日思ったのは,流浪堂という古本屋さん(今,店長さんのインタビュー記録,見つけた。うんうん,彼はすてきな感じだ。)。我が新居の近くは,古書店は結構ある。それで,東京で,私にとって見やすい中型,大型書店っていうと,どーなるのかなーってずっと考えていて,池袋は,ジュンクは私の職場から駅の反対側で,私の感覚では近くて寄りやすいとは言えない。西武のLIBLO池袋本店の方がもちろん近い。・・だけど,なんか両方とも,京都の書店のような,私にとって寄りやすくて心地いい,という感じがない。。私にとって寄りやすい立地ではないけれど,雰囲気や作り(レイアウトやディスプレイ),どんどん読みたい本が見つかるという意味では,神保町の三省堂本店が私にはダントツに思われる。たぶんなんだけど,ひとつにはやっぱり,書架を有能なプロが作っているお店と,納品されたまま適当に並べているというようなお店は,違うのだと思う。三省堂本店は,動いている部分と動いていない部分(棚のこと)の両方が見やすい(必ずしもすべての店員さんが親切で根気よくサービスしてくれるとは思わないのだけれど)。ただまあ大型書店は東京には好き嫌い別として行こうと思えばいくらでもあるので,個性的な小型書店でときどき寄りたくなるようなお店をと思って,SPBSに目をつけていたのだ。
 行ってみたら,思っていたより広い空間だったけれど,思っていたより本の数は少なかったなー。しかし圧倒されすぎないという意味では,よい。さっそく,民藝の器の本『民藝のうつわをめぐる旅』が欲しくなる。絵本は翻訳ものが中心で,これまた冊数はとても少なかったです。セレクションも,当然なのでしょうが,大人好みな感じ。赤ちゃんにはまだ早いのはわかっていながらも,私の思い出の一冊,『そんなとき なんていう?』がどうしても気になった。岩波の絵本はどこにでも売ってるけど,とりあえず1冊は決めた,と思って,民藝の本と一緒にご購入。たぶんまた来るなと思いながら,お店を後にした。
 しかし,ものすごく個人的な,本屋さんとしての好みという意味では,私はSPBSとか,カッコヨイ書斎でほら有名な石田衣良さんのおうち(こんな)とか,広くてスタイリッシュな空間に本が収められディスプレイされているというのよりも,少しごちゃごちゃしてて整理されてんだかされてないんだかわからないような,おおいかぶさってくるような雰囲気の書架作りの本屋さんが好きだ。院生時代に千駄木に住んでいたころは,往来堂書店にときどき行っていたのを,そういえばと今,思い出した。そうだそうだ,また行ってみよう。と思ったら,SPBSと往来堂の経営者さんのお二人の対談を発見。つながるんだなあ。
 それにしても,日本ってなんて,読書についても,なんでこう重層的になっているでしょうね。「社会制度としての公共図書館が1世紀以上の歴史を持つ欧米と異なり,日本の読書空間は公共図書館を含む多元的な文化機関によって構成されている。」という吉田右子さんのことば(吉田右子「1960年代から1970年代の子ども文庫研究の再検討」Vol.50,No.3,2004.9,p.103-111,p.103)がまたもや思い出されました(吉田さんに私がインタビューした記録;私の恥ずかしい発言はたくさんありますが,とっても勉強になります)。図書館が,こういう本を売っている場・機関と,どう社会的な役割分担するか,ということが問われているのかなと思います。外国のものを含んだとしても,図書館だけを見ていては,図書館の本質まで議論が行き着かないのだと最近強く思います。(もっとも,ワシンポスト紙の記事によると,アメリカで書店が増えてるそうで。)
 さて,3月11日から半年が近づいてきて,7月27日の衆議院厚生労働委員会での児玉龍彦先生の参考人意見陳述から1ヶ月が過ぎ,種まきによいと聞く新月の昨日には新しい首相も決まり…いよいよ,9月です。公開講座「情報を評価し,判断する力をいかに育むか」の準備はちびちび進めています。企画者としては,もう少し予習をしないといけないなあと思いながら,リビア,そして北アフリカの情勢も気になり。。
 などと考えていたら,立教に新たに中央図書館が開館することが,なぜか今さら日経新聞のニュースになってた