Google Chromeの拡張機能

 昨日,ブリタニカの百科事典が,グーグルの検索結果の右側(スニペットと言うそうな)に現れてくるというChrome拡張機能についてのニュースを見た(これ)。びっくりして早速入れてみた。これはすごい。
 価値のある情報は有料なんだよ〜!っていうメッセージを,ブリタニカのような伝統的出版者は言いたいわけですが,実際のところ,ググった後,wikipediaまでは見ても,もう一度,Briitanicaを開いてもらうっていうのはけっこうハードルがあるのだと思うのですね。大半の人はしないでしょう(ライブラリアンはするかもしれないが)。なので,google上でこうやって存在感を示して,実感してもらうより他ない,という判断なのでしょう。Chromeウェブストアから入れてぜひ試してみてください。英語で,French Revolutionとかって検索すると,うまく見られます。もちろん,無料ですよ。
 ちなみに,同じChromeウェブストアから,「カーリル」とかって入れて検索してみてください。もうみなさん知っておられるかもしれませんが,「その本、図書館にあります。」というのが出てきます。入れてみてください。Amazonでの無駄遣いが減りますよ(笑)。まあ,図書館の無料貸本屋化を勧めたいわけじゃないのですが,よくできたプログラムだなあと本当に関心しますよ。
 
 今日,最初に紹介したニュースの下の方に,「オンライン百科事典「Everipedia」がブロックチェーン導入で目指すもの」っていう記事へのリンクがあります。これもすごく面白いです。最近,ブロックチェーンの図書館への適用について,考えています。私は技術的にしっかりわかるというところまではいけそうにもないですが,インターネットと同じくらいの革命を起こすと言われている技術ですので,注目しています。ちなみに,昨年,招聘研究員として本学司書課程にいらしてくださったサンドラ・ハーッシュ博士のサンノゼの大学院では,先日,ブロックチェーンに関するオンラインのコンフェレンスを開催したんですね。ここに記録がまとまっていますが,キーノートスピーチだけでも,ごらんになるとすごく刺激を受けられると思います(英語です)。ブロックチェーン技術が図書館や情報管理・情報共有の世界をどう変えるかを想像すると,今の,図書館を含む,社会のあり方がどれだけ塗りかえられるのだろうと,わくわくします。中央集権的な社会(近代国家)のあり方は限界が来ている。21世紀のうちに,テクノロジーが牽引して,後近代の新しい社会への移行がかなり具体的に起きるかもしれないですね。

AASLの新しい基準のパンフレットを翻訳しています

 こんにちはー。
 このたび,立教大学司書課程の学生さんたちとこちらにサイトを立ちあげて,新基準のダイジェストと言ってよいかわかりませんが,AASLが無料公開している,学習者向け基準のパンフレットの翻訳を公開しはじめました。新基準については,本年3月に,『カレントアウェアネス-E』で紹介をしました(こちらからどうぞ)。
 翻訳の作業,ディスカッションに加わりたい方はどなたでもwelcomeです。ただし,学生たちの自律的な動きを妨げない条件ですぞ(笑)。

 さて,6月2日には,横浜インターナショナルスクールで,こちらのワークショップの第1回を開催し,二十数名の方たちが集まってくださいました。私としては,これからの日本の学校図書館専門職養成のあり方について,大変考えさせられる機会となりました。まあ,一言で言って,私には,大変,清々しい,一日でした。まずは頭の中を掃除するのにも,異文化の人と出会うのは,意味があるなと改めて。第2回目以降のご参加申込,まだ受け付けています。どうぞ加わってください。

40代が老害になる時代

 昨年あたりから、「老害」にならないようにせねば、としばしば思うようになった。将来のことを話しているのではない、今、自分(40代半ば過ぎ)が老害になっているのではないかという恐怖と戦っているという話。
 私だけが思っているわけでもあるまいと、今、これを書きはじめるにあたって、「40代 老害」とベタに入力してグーグル先生に聞いてみたら、いるいる(笑)。雑誌記事やら、ブログやらが出てくる。中でも、そうだよなあと思ったのが、このブログの記事

今の若い子のほうが優秀
はっきり言います。20代、30代の若い世代の人たちの方が、我々40代よりも優秀な人が多いです。パソコンやインターネット環境が当たり前にあり、常に多くの情報に触れる機会があった彼らは、我々の世代よりも早く成熟しているし、物事の判断が非常にクールで合理的です。またそれが今の時代の生き方、仕事のやり方に非常にマッチしています。

彼らが優秀であること認めないと。自分の能力の低さも認めないと。そして謙虚に彼らから学ぶんですよ。「俺には経験がある」「年齢は上だ」なんて、クソの役にも立たないプライドですよ。

 まったくですわ。すべての若者がそうだとは言わないが、この人↑が言っているように、"多い"。
 以前、D社にいたときもたまに感じてたけど、学生たちといると、彼/彼女らは黙って私の言うことを聞いてくれるのだけれど、それって、宇宙人がしゃべるのを見ている感じなのかなって…。そのくらい、考えていることや見えていることが違うのじゃないかなって。私が10代20代で上の世代を見ていたときには、連続性を感じられていたけど、今の若者が私に対して自分の先を生きる同じ人間という連続性を感じてくれているかどうかわからない。
 
 昨日、「図書館概論」の授業で、図書館の基本的な役割として収集→組織化(整理)→保存→提供があるという枠組みを示して、それぞれの仕事において専門性があるというような話をしていた。収集においては、資料の選定とコレクション形成の仕事があり、それぞれにおいて、資料の評価(質の評価、出版動向やニーズとの関係からの評価)や内容分析をする知的な仕事だとかいった話。そして、資料の組織化に関わっては、人間は秩序を求めるものなのかという問いを投げかけてみたり、NCR、NDC、BSHとかいった図書館の世界で発明されてきたツールがあって、これらを習得するのにはかなりの学習や経験が求められるといったことを話していた。でもねー、ま、そんなん変わってきてるよね。自分で説明しながら、歴史を話している気分でしたよ。
 今朝は、AIを使った選書システムを日販と富士通が共同開発したニュースやら、本の要約サイトFlierが人気で、AIによる要約記事の自動読み上げ(音声化)機能もあってなんていう記事を見かけて…司書の専門性とされてきたことへのテクノロジーの採用が止まらない(日本の場合はそうした専門性の高い部分は業者さんに外注していたという話もあるが)。で、これを作っている人たちが、過去の図書館の世界の慣例なりを知っていると、役に立つ"かも"しれないが、もしかしたら知識がじゃまする可能性もあるだろうし、絶対知っていた方がよいと言えるかね。
 
 世界が急激に塗りかえられてきている。ほんとうにポスト・モダンがやってきているという気がする。ひとつは金融。銀行員の大リストラ時代。私が学部生のころ、高学歴者は銀行に就職していった…中にはすぐに辞めた私の友人のようなヤツもいましたが…(笑)。彼は見切りつけるの早かったなあ!今となれば尊敬する。私のようなとんびさんには見えていない先が見えている人はいたってことですな。関連して、昨晩やっていたNHKクローズアップ現代「“現金お断り”で暮らしが激変!? 〜追跡・キャッシュレス最前線〜」は再放送があったら観ておいてもいい番組だと思いますよ!中国、進んでる!!もう日本より中国の方がテクノロジーは上って時代(もっとも、自分の情報の管理については注意が絶対、必要)。あともう一つ、NHKスペシャル「仮想通貨ウォーズ 〜盗まれた580億円を追え!〜」もすばらしかった。再放送が5月17日午前1時00分〜1時49分(16日深夜)にNHK総合であるそう。ここで出てくる若者たちを見ていると、ほんと、つくづく時代が変わっており、40代がすべきは若者が新しい社会を作っていこうとするのをじゃましないことだと思う。いっぽうで、日本の教育は子どもをsuppressしすぎているのではないかとしばしば、目の前の学生を見ていて思う。これから彼らに出会う大人がsuppressしないだけではたぶん足りなくて、一度、彼らがsuppressされていた過去について仕切りなおすような体験が必要になっていると感じることすらある。もう、教師は知識を与える人って時代じゃないな、とにかく。自由に、一人ひとりの子どもが自らの可能性をのばせるようになるための、なんだろう…同伴者とも違うし……なんですかね、ファシリテーター?刺激する人かしらね。

 というわけで?、学校図書館なり図書館なりに関心をもつワカモノに、ぜひとも今度いたしますワークショップに加わっていただきたいです。正直、中学生に来てほしい。本気でそう思っている。

『私はコーヒーで世界を変えることにした。』

 GWは、本学は授業日が何日かあって、ぜんぜん特別な週ではなかった気がするのですが、それでも娯楽に費やす時間はいつもより取れました。そんな中で、仕事について考えさせられるできごとがいくつかあり、いいなあ、若者・お子さまも読んだらいいんじゃないかなあという本にも出会ったので、なんとか整理して書いてみる。
 私が学部生が終わるころ、就職活動の時期がやってきて、差し迫る形ではじめて真剣に、かつ具体的に仕事について考えたときに思ったのは、自立(経済的・精神的に)したいということが一番で、氷河期だったし、女性にはアシスタント職が用意されていた時代だったから、自立できる仕事を見つけたいというだけでもかなりハードルが高いように感じた。でも、最初はアシスタント職に就くにしても、何か見つけて、必ず30代はじめくらいまでには自立しよう、と思っていたように記憶している。そして関連して、働くって、他の人の誰かに役立たないと、お金は貰えないよなあ、と。自分は何で人の役にたてるのだろうと、悶々と考えていた。それに加えて、自分がなにかとpickyな人間である自覚はそのころまでに十分もっていたので、やっぱり、長く続けられそうなこと、要するに好きなことを仕事にしないとだめだよなあ、と思っていたと思う。
 その後、いろんな働く人たちと出会ってきて、どういう人が美しいって、好きなことを仕事にしている人、もしくは人(他者)のために働いている人、もしくは好きなことをして人のために働いている人だなと強く思うようになった。司書もだし、医療従事者や、料理人にはけっこういるかな。あとは聖職者やエンターテイメント界の人か。すごくわかりやすい究極の例で言うと、ポールです(笑)、Paul McCartney。彼のコンサートに行って、こんなに、自分の好きなことをしていて、かつ、人を楽しませることが好きな人がいるのだ、と感銘を受け、"ポール"は私にとって、働く人をほめたいときに使う言葉になった。友人でいきいき働いている人、日常で出会って、ああこの人の働き方、生き方は美しいなと私が感じる人は、だいたい、この二つの要素をもっている。

 などと思っていたら、GWに入るころ、こういう人たちもそうだなあとつくづく思う二人を見つけた。一人は、この育児ブログの主。発達障害をもつ子どもの育児記録なのですが、最初は自分の息子の障害を知らずにいて、気づいて、試行錯誤を繰り返しながら子どもの成長を促し、見守っていく、そのいろいろがブログに綴られている。どうやってこのブログに出会ったのか忘れてしまったが、何かのきっかけで見つけてから、通勤電車の中でこのブログを最初からずーっと見ていき、あまりに感動して、彼女の書いた本『うちの子は育てにくい子:発達障害の息子と私が学んだ大切なこと』を買った。これを読んで、みながいかに手をかけて、心を寄せて、子どもを育てていくのかに今さら気づき、大人になってすっかり忘れてしまっていたけれど、自分もずいぶん手をかけてもらって育ったのだよなあと思い出し、彼女も、私の中で、"ポール級"(←これが最高のほめ言葉なわけです)に認定した!
 と同じころ、レディ・プレイヤー1で、スティーヴン・スピルバーグっていうのも、"ポール級"だよなあ、と思い知らされた。この映画、curatorが登場します。curatorは日本では学芸員のことだと言ったりしますが、英語の世界では必ずしもそうではないようで、特に大学図書館専門図書館では、curatorと言って、学芸員と司書の仕事を合わせて行っているような人がけっこういると思います。本学に今年、着任したハモンド先生はイエールでcuratorというタイトルももっていました(ハモンド先生が自らのキャリアについて語られた記事(英語でのインタビュー)はこちら)。まあ、この映画に出てくる、Halliday's Journalというハリデーという人の人生の記録を集めた博物館/文書館のようなところや、Anorak's Almanac(アノラックというハリデーのアバターの名前がついているが、実際はハリデーの人生の記録)などの存在をみると、アメリカ社会において、記録を残す、しかも整理して残す、ということが、私たちとはまったく違う重みのあることであり、それが文化として広く共有されていることを実感する。

 などとしているうちに、GW終盤に、これまたネットサーフィンで、このページを見かけた。とんでもない人だと思い、彼の著書『私はコーヒーで世界を変えることにした。:夢をかたちにする仕事道』をすぐに読んでみた。ページを開くたびに感動して、止まらない。早速、GWに出かけてないんだからこのくらいの贅沢いいんじゃない?と、彼の開いた銀座のお店グランクリュに行ってみた。一生行かないかもしれないと思ってた、GINZA SIXに入っちゃったよ(笑)。いやあ、2種類飲んだのですが、二つめを口に含んで私、泣いちゃいまして。食べもの飲みもので泣いたの、はじめてかもしれません。ほんとすごいですわ。私の飲み物観が変わった。
 この川島さんという人、ほんとうにすばらしいと思うのは、好きなことをして人のために働いている人なんですけど、コーヒーを作っている人の側に立った「人のために働いている人」なんですね。『私はコーヒーで世界を変えることにした。』を読んで、グランクリュのコーヒーを飲んで、そう思いました。ほんとうに「世界を変える」かもね、と。南北問題なんかを彼はコーヒーでほんとうに解いていくかもしれないな。フェアトレードという言葉が薄っぺらくすら思われるような、そういうすごみを川島さんからは感じますね。この本の中で、そういうことを直接語ってはいない。し、ポプラ社のこの本の紹介ページ(上掲)の推薦文"自分の仕事を愛し尽くす……男の真の幸せとは、こういうことなんだ!"なんていうことも当然、川島さん自身は書いておりません。サブタイトルも、川島さんが付けたとはとても思えない。彼の両親が彼をいかにきちんと育てたか(過保護な意味ではなく)を見ても、彼が考えていることは"男"だ"仕事道"だなんて言葉であらわされるものとは違うのではないかと思うのだよなあ。"幸せ"って言葉すら違う気がするよ...
 というわけで、川島さんにどこかで会えないかなあと妄想しております(笑)!

東アジアインターナショナル・スクールライブラリアズ・フォーラム2018

 みなさま、新年度、いかがお過ごしでしょうか。当方、学内で、図書館長なる役に就きまして、めちゃくちゃ楽しく、忙しい4月を過ごしました。いっぽうで、ちょっと前のエントリで予告していましたが、本学司書課程の講師布陣も大きく変わりました。HPで宣言したように、本学司書課程は、「“情報”スペシャリストの育成」と「“国際的な視野”の獲得支援」を特色として掲げて、これからも本学全学の学生に対する課程として魅力あるプログラムを展開し、図書館その他の情報に関わる世界(ってこの世のあらゆるところってことか)で大いに貢献できるよう、学生たちとともに成長していきたいと思っています。ちなみに、新しい特任教授のエレン・ハモンド先生は、アメリカ国籍の日本在住、バイリンガルです。また、今年は、科目等履修制度を、本学卒業生以外にも開くように改めて2年目となりましたが、なんと、3名の学外者の入学がありました!すばらしい。大変、すばらしい。学部時代に司書資格・司書教諭資格を取得しなかったけれど、本気で図書館で働きたいと考えている方には、本学司書課程は悪い選択肢じゃないよと本気で思っています。今後もますます科目等履修生の受け入れを積極的にしていきたいと考えています。教室に多様性が生まれ、ほんとうに楽しい。

 さて、今日は、私の仕事の職場の話はこのくらいにして、「東アジアインターナショナル・スクールライブラリアズ・フォーラム 2018」(International School Librarians’ Forum of East Asia 2018)の告知をしたいと思います。こちらに特設ページを作りました。来月2日(土)、7月28日(土)、9月22日(土)に開催します。コミュニケーション言語は英語になりますが、くらいついてくる覚悟でいらしていただければ、なんとかなるのではないかと。先着順で各回20名の募集です。リンク先のページをよくお読みいただいて、お申し込みください。日本語での募集要項は後半にあります。

ニッポンの著作権法改正(おそっ)とアメリカ,オーストラリアの大学図書館の今

 とうとう,著作権法改正(案)のニュースが入ってきました(毎日新聞の記事文科省の発表ページ)。これで,これで,日本の教育も本当に変わっていく(かも)...涙涙。
 過去2年かな,図書館情報学教育のe-learningを介した国際連携プログラムを模索するべく,国内外で調査を続けてきていましたが(本学司書課程紀要SPLでも報告;こちら),問題はこの著作権法でした。アメリカの図書館にレファレンスサービスを頼みに連絡すると,見つかった資料(本の1章とか)は,PDFファイルで添付で送られてくる。でも,日本はいまだに紙でノロノロと。日本の大学でe-learning,まずは例えばオンキャンパスの授業でペーパーレス(紙の配布資料無し)をやろうとしても,この著作権法に阻まれる。それが,来年の1月1日から,変わりそうです!!
 実は,来年度から,司書課程で,iPadを学生分,リースすることが実現する見込みです。司書課程の授業は,ペーパーレスに向けて,本格的に動き出そうと思っていましたが,この著作権法改正が実現すれば,ほんとにほんとにペーパーレスに向かえそう!!楽しみです。(楽観視しすぎかな,まだ案だしな...)
(2018.3.8追記:来年の1月1日からではない模様,誤情報を流し申しわけありません。コメント欄のやりとりをご覧ください。ご指摘いただき,ありがとうございます。)

 今年はさっそく,2月で2度の海外出張をしました。アメリカのコロラド州デンバーと,オーストラリアのクイーンズランド州ブリスベンです。デンバーでは,デンバー大学の図書館メインの図書館法学図書館と)デンバー公共図書館の中央館を見てきました。ブリスベンでは,クイーンズランド工科大学の図書館と,クイーンズランド大学の社会科学・人文科学図書館,そして,ブリスベン公共図書館の街のど真ん中にあるブリスベン・スクエア図書館,そしてクイーンズランド州立図書館に行ってきました。
 大学図書館について言えば,はっきり申しまして,もうどの大学の図書館も,図書館は人びとが出会う場,学びあいの場として再定義され,フロアの半分(低層階)では,本や書架は少しはあっても,もはやまったく中心的な存在ではないですわ。で,何をしているかというと,学習支援ですよ。一番徹底していたのが,デンバー大学図書館のメインの図書館(本館)ですね。いやあ,シビレました。これだな,これからの大学図書館は,と確信しました。なんて興奮してたら,これ,5年前に開館してるのですね...こちらの開館時のYouTubeの映像をご覧いただければ,まるで実際に行ったかのように感じられるのでは。本や書架の撤去という意味では,ブリスベンで見た2大学の方が徹底していたと思います。クイーンズランド大学じゃ,電子レンジが図書館の中に置かれてて,学生にどんどん来てもらおうっていう意志を感じましたね(笑)。クイーンズランド大学って古くからある名門だと思いますが,そういう大学の人文系の図書館でここまで書架が無くなっているのかと驚愕しました。また,ライブラリアンの存在は,ほんとうにほんとうに高度なレファレンスや学習支援ができ,かつ企画力のある人以外はいらないっていうことになって,あとは学生・院生のアルバイト雇用(学生同士が支援する方がよいという考え方)が広まっているようですね。オーストラリア社会の機械化って徹底していて,もしかしたらアメリカより進んでいますね。入国審査ももう完全に電子化されてましたよ(笑)!修士課程に在学していたころ(20年前か),combined libraryつまり,公共図書館学校図書館がいっしょになった図書館に関心をもって英語の文献を読んでいましたが,オーストラリアで広まっている実践のようだったのですが,実際に行ってみると(僻地には行けていませんが),さもあらん。私が卒業したハワイ大学の巨大版みたいな雰囲気のクイーンズランド大学を歩きながら,この人口密度じゃ,combined libraryも当然だし,なんでも機械化しちゃおうってなるわね,と思いました。
 公共図書館もまた,人が出会う"場所"として,再定義されていますね。しかも,コミュニティの多様性に出会う場所なのですね。コロラド公共図書館は,雪のちらつく寒い日に行ったこともあるでしょうが,ホームレスの方たちもたくさん来ていて,寝てたりご飯食べてたり,もうやりたい放題(笑)。若干臭うのですが,まあ広いから,そんなに気にならないかな。攻撃してくるわけでもないし。でもその一方で,地元の歴史を知る自主的なサークルらしきグループが集まっていたり,いろんな形で使われているのですよね。ブリスベンの場合も,館内はいろんな形状(家具)のmeeting roomだらけで,人と集まる場所を提供するっていうことを,図書館の中心的な使命としていることがわかる。でも,公共図書館の方が,本の位置づけはまだ,けっこうしっかりありますね。でもでも,日本といっしょということではまったくないです。だって,コンピュータの台数やミーティングルームの数がまったく日本の公共図書館と違いますもの。以下の写真のような感じですわ。コーディングを学ぶ道場っていうのも面白いなあ!!!(スマホが劣化してるわ,私の撮り方も悪いわで,写真がクリアじゃなくてすみませぬ。)

(2018.3.2追記)写真の位置と大きさを変更しました。

ALA冬季大会@デンバー

 ALA Midwinter Meeting 2018に行ってきました。冬季大会ははじめての参加です。2月9日から13日といつもの年より時期が遅かったこと,また,昨年11月に発表されたAASLの新しい学校図書館基準について学びたかったことから,入試業務を調整してもらい,少し免除もしてもらって,行ってきました。ありがたい機会でした。
 新学校図書館基準『学習者,学校図書館員,学校図書館のための全国学校図書館基準』(National School Library Standards for Learners, School Librarians and School Libraries)は,314ページと大部であり,会員外への定価は199.00 USDと高価でもあって,過去の基準とはちょっと違うものであろうとすぐに推測はされたのですが,入手してみて,グラフィックが多用されているものの,文化的背景を共有しない私たちには特に,理解にだいぶ時間がかかりそうだという印象を私はもちました。インターネット上にもさまざまな情報は出ているのだが,それらを入手しても,どうも腑に落ちない。しかし,今回,ALAの大会に行ってみても,学校図書館関係の集りはどれも小さく,それほど基準のことで盛りあがっている感じもない。はてさて,と思っていたら,AASL Standards and Guidelines Implementation Task Force,つまり,新基準の実現に向けての特別委員会の代替わりの引継ぎミーティングに,オブザーバーとして参加を許可してもらうことができました。これが,基準策定のプロセスを(部分的にではあるが)リアルに知ることのできる,大変貴重な機会となった。デンバーまで出かけて行ってよかったと思えました。
 端的に申しまして,やっぱり,アメリカ人というのは,自治の強い意志をもつ人たちなのだなあということがよくわかりました。日本でこれができるかと言ったら,私は少なくとも今の日本では大変難しいと思います。基準を作る委員会も,その実現(現場での導入を意味する)に向けての具体的な方策を提案する委員会も,別に,図書館情報学の大学教員なり,現場の学校図書館員なりをしている人たちが中心で,そこにALAの本部から担当者が貼り付けられてサポートするという進め方。文科省による指針,指導のようなものも無く,すべてを自分達で作りあげている。また,参加している人たちは,少なくとも実現に向けての特別委員会のメンバーについて言えば,自ら手をあげて参加に至っており,その献身は,life-changing event(人生が変わるようなできごと)だったと言っていた。そしてできあがっている基準は,前述のように大部で,複雑で,一朝一夕に理解できるようなものじゃない。もう少しシンプルでもいいのじゃないのと私個人は思わなくも無いが,前回の基準くらいからか,なんだか複雑化しているよね。評価・評定の視点っていうことを考えると,細かく,具体的な記述も必要になってきて,そうなっちゃうのかなあ。この新基準については,今朝,カレントアウェアネス-Eの編集部に原稿を送りました。簡単な概要説明をさせていただきました。そのうちアップされるかと思います。
 その他,おもしろかったのは,オクラホマ大学の若いライブラリアン2人の発表で,図書館のもっている情報資源を使ったボット(bot)による自動応答システム開発の報告。こちらは,日本でも,私もやってみたいと思うようなものでした。自動レファレンスサービスに展開して行くような流れかもしれないですね。あとは,ALA会長企画の「図書館は中立か(Are Libraries Neutral?: Have they ever been? Should they be?)」というパネルディスカッションや,大会閉会式を兼ねた,二人のサイエンス・ライターの対談(Bill Nye and Gregory Mone)が印象的でした。院生たちと一緒に翻訳してもいいなあと思った。申しわけないのだけど,昨年のJLAの企画と比較してみると…いやもう,昨年,記念講演のスピーカーの名前を見た瞬間に,私は行かないと思いましたもん。呼ぶ人,間違えてるよ,ほんとに。彼じゃあ,図書館の"未来"が見えない。ま,若い人が聞きたいと思う人を呼ばない時点で,きっと未来なんか考えてないんだよね。あ,すみません,また筆が滑りました,ハハハ。